終了「小町渉 VERY STICKY FINGERS VOL.2」

 

 

小町渉 新作コラージュ展

WATARU KOMACHI Recent Works
VERY STICKY FINGERS VOL.

4月18日(水)~5月1日(火)

TRAUMARIS|SPACE

 

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小町渉は、東京とパリの2都市を拠点に、アートとプロダクトとファッションの領域を自由自在に行き来する作品を制作してきました。著名なアートコレクターでもあった故デニス・ホッパーにその才能を見出されたことからアーティスト活動をスタート。2000年、クラシックなアームチェアなどの中古家具の張り地を、シルクスクリーンによるハンドプリントのオリジナルファブリックに張り替えた作品を発表。HERMESの現アーティスティックディレクターを務めるデザイナー、クリストフ・ルメールより協同制作の依頼を受けたパリでの個展を契機に、ヨーロッパ進出を果たしました。

「ギターの3コードみたいに、シンプルで、最大の効果のある方法を選んだ」という小町の作品は、ありふれたプロダクトにパンクスピリットをエレガントなやり方で注入する独自のアプローチによって生み出されます。デュシャン以来のレディメイドとサンプリング&リミックスの現代芸術史において、ミュージシャン出身である小町のスタンスと関連の深い作家を挙げるとすれば、グラスゴー出身のジム・ランビーでしょう。ジム自身が「寝室のベッドの上でこしらえるハンドメイドの儀式」と呼ぶ、ティーンエイジの頃から変わらない「感触」がもっとも煌めいているのが、小町がデビュー以来、日常のストレッチのようにつくり続けるコラージュ。一見イージーな手法のようで、都市的なセンスと即興的スタイルが決め手となるコラージュの新作を2012年、3回にわたり発表いたします。

 

●展覧会タイトル:

 

WATARU KOMACHI Recent Works

VERY STICKY FINGERS VOL.2

小町渉 新作コラージュ展
 

会期:2012年4月18日(水)~5月1日(火)第2回

 

   *第3回の会期は未定。

 

会場:TRAUMARIS|SPACE

   〒150-0013 渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F 

   TEL 03-6408-5522 月曜休

   16:00-24:00(日曜14:00-22:00)

   URL:http://www.traumaris.jp

 

問合せ:info@traumaris.jp

 

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ARTIST’S PROFILE
 

小町渉  Komachi Wataru

東京都出身。アーティスト。

デニス・ホッパー監督「ラストムービー」パンフレットへのコラージュ作品を依頼され、その作品がアートコレクターとしても有名なホッパー氏の目にとまり、彼のコレクション作品となる。
その際、ホッパー氏のロスアンジェルスにある自宅兼オフィスを訪れ、彼の膨大なアートコレクションに刺激を受け、本格的にアートの世界へ身を置く。

2000年、DEEP galleryにて個展を行う。中古家具をリメイドした作品が話題となる。
同年、仏ファッションデザイナー、CHRISTOPHE LEMAIRE氏(現エルメス アーティスティックディレクター)とのコラボレーション展「WATARUKOMACHI@CHRISTOPHE LEMAIRE)をパリにて開催。この展示を機に本格的に海外へと進出。

以降、パリのセレクトショップ Colette/パリの老舗デパート(ボンマルシェ)/ロンドンのセレクトショップ
THE PINEAL EYE等、高感度な現場での展示発表が続く。
2001年、米オルタナティブ.ミュージックアーティストBECKのヨーロッパツアー・オフィシャルT-シャツのデザイン及びツアータイトル「PLASTIK KOSMOS TOUR」タイトルを考案する。

2008年には松屋銀座との全館フロアを使用した大規模コラボレーション「WATARU KOMACHI X MATSUYA GINZA(ギンザリミックス)」を行う。

2010年(アルフレッドダンヒル)初の試みである世界4都市同時開催DUNHILL アーティストウィンドウプロジェクト東京代表に選出される。

 

受賞歴________________________________

2005年 デザインタイドTOKYO 第1回「BEST TOKYO DESIGN」受賞

2009年 日本メンズファッション協会MFU 第6回「ベストデビュタント賞」ARTIST部門受賞

 

主な展示_______________________________

2000年 DEEP  (東京)

2000年 コレット(PARIS)La Plages展group show

2000年 クリストフ・ルメール(PARIS) wataru komachi@christophe lemaire展

2001年 ボンマルシェ デパート(PARIS) exposition collections particulieres展group show

2001年 スピークフォービル  株アバハウス(東京)

2001年 ザ.パイナルアイ (LONDON)

2005年 BIJOUX 丸ビル  株H.P.FRANCE (東京)

2005年 ザ.パイナルアイ(LONDON)

2006年 CIBONE青山(東京)

2007年 国立新美術館 sft gallery (東京)from tokyo展group show

2008年 CALM&PUNK gallery (東京)

2009年 TOKYO HIPSTERS CLUB 株ワールド(東京)

2010年 ROCKET (東京)

2010年 「小町渉meets谷岡ヤスジ展 アサーッ!Let’s Do It Again」 協力Sony Digital Entertainment /谷岡プロ/株ワールド

2010年 LONDON CALLING 巡回展group show (東京) RayLowry 財団

2010年 GALERIE AGATHE HELION & CLEAR (PARIS)URBANITY展 group show

2010年 アートフェア東京
S-des gallery.株式会社ソニー.デジタルエンタテインメント.サービスより出展

2011年 アサヒビール大山崎山荘美術館 (京都)「かんさいいすなう- 人はすわって考える?大山崎山荘にすわろう」展 出展

2012年 TRAUMARIS|SPACE(東京)「VERY STICKY FINGERS VOL.1-3」

    CLEAR EDITION & GALLER(東京)「A WHITER SHADE OF PALE」

 

 

Biography

 

WATARU KOMACHI

born in tokyo

artist

Komachi style is “CROSSOVER”art+fashion+product…….

komachi has shown his work predominately in tokyo and paris,at edgygalleries & hot spaces like

THE DEEP GALLERY(tokyo):CHIRISTOPHE LEMAIRE(PARIS):Colette(paris):THE PINEAL EYE(london):(BECK)europe tour t-shirts designed:Le Bon Marche Department(paris):Matsuya Ginza Department(tokyo) etc.

2010 ALFRED DUNHILLlocal artist project TOKYO

2010 art fair tokyo (from s-des gallery. SONY digital entertainment)

[AWARDS]

2005.DESIGN TIDE TOKYO(BEST TOKYO DESIGN)

2010. MFU (BEST DEBUTANT OF THE YEAR )

[SELECTED EXHIBITION]

2000. THE DEEP GALLERY (tokyo) solo .bc/ad

2000.COLETTE (paris) group show.la plages

2000.CHRISTOPHE LEMAIRE (paris) solo.
wataru komachi@christophe lemaire

2001. LE BON MARCHE DEPARTMENT (paris) group show.
exposition collections particulieres

2001. SPEAK FOR Bldg (tokyo) solo.kiss the carpet

2001. THE PINEAL EYE (london) solo.shake out the ghost

2002. LACOSTE 12.12 PROJECT (tokyo) group show.

2005.THE PINEAL EYE (london) solo.god save the kate moss

2006.CIBONE GALLERY (tokyo) solo.

2007. THE NATIONAL ART CENTER TOKYO.SFT GALLERY (tokyo)
group show.from tokyo
2008. CALM&PUNK GALLERY (tokyo)solo.fuck forever

2009. TOKYO HIPSTERS CLUB (tokyo) solo.rock is my religion

2010. ROCKET GALLERY (tokyo) solo.pussy eye

2010. LONDON CALLING Detour Exhibition (tokyo) group show:by Ray Lowry Foundation

2010.GALERIE AGATHE HELION & CLEAR(PARIS)group show:URBANITY

2011.ASAHI BEER OYAMAZAKI VILLA MUSEUM OF ART (KYOTO) group show

2012.TRAUMARIS|SPACE(Tokyo) VERY STICKY FINGERS VOL.1-3

   CLEAR EDITION & GALLER(tokyo)「A WHITER SHADE OF PALE」

 

 

TEXT

 

PLASTIC DAYDREAM

 

住吉智恵 CHIE SUMIYOSHI

 

 私たちは誰もがそれぞれの10代の頃の“感触”(タッチ)に瞬間移動する、自分だけの装置をもっている。音楽はもちろん、そのもっとも手軽に触れられるスイッチだ。なかでも1970年代後半に10代を過ごした者の多くにとって、パンク・ミュージックはまちがいなくカンタンに、あの“感触” (タッチ)を再起動する装置である。

 ミニマルセットのドラムから叩き出される疾走するビート。昨日覚えたばかりのように3コードをかき鳴らすギター。痛いほど尖り、切ないほど傷んだシャウト。安っぽくて儚い、ティーンエイジャーの白昼夢が、方向性もなく、ただ衝動にまかせて加速していった。ロンドンの掃き溜めから生まれ、ニューヨークへ渡って倦怠と虚飾に彩られ、LAに漂着したパンクムーヴメントが子供たちに遺したもの。それは決して抜け落ちることなく、密かに内側に向かっていく“棘”だ。

「パンクは、エレガントで純粋な、一瞬の花火。暴力じゃない。エネルギーを発したのはどうしようもない自分自身への苛立ちです。パンクは弱者の音楽だったけれど、その気持ちを持続するかぎり負け犬にはならない、そういうものじゃないですか」。

そう語る小町渉の“棘”は、あくまでポジティブに彼の神経を刺激し続けている。

 小町渉は、東京とパリの2都市を拠点に、アートとプロダクトとファッションの領域を自由自在に行き来する作品を制作してきた。2000年、クラシックなアームチェアなどの中古家具の張り地を、シルクスクリーンによるハンドプリントのオリジナルファブリックに張り替えた作品を発表。「ギターの3コードみたいに、シンプルで、最大の効果のある方法を選んだ」というこの作品は、ありふれたプロダクトにパンク・スピリットを、まさにエレガントなやり方で注入する、彼独自のアプローチだった。

 2005年には、大量生産でありながらきわめて一点物に近い「染付下絵銅板」という廃れかけた伝統技法を用いた陶器作品を発表。DesignTide in TokyoにてBest Tokyo Design Awardを受賞する。ここでも彼は、多治見や瀬戸の工場に眠る大量のデッドストックから、ありモノのチープな壺を発掘してきた。おまけにその腹には『HAVE A NICE DAY』の陳腐なフレーズが、擦れがちな文字で描かれている。

「身近にあるモノの形に落とし込むことが好きなんです。それもアメリカの観光地の土産物屋にありそうな花瓶をつくりかった。『良い一日を』っていう挨拶に込められた、ぜんぜんナイスじゃない皮肉なニュアンスも気に入ってます」。

 デュシャン、ウォーホルを祖とする「レディメイド」「複製芸術」「コラージュ」「引用」といった手法は、もはやコンテンポラリーアートの定石である。しかし近年アートシーンに現れた作家たちは、ふたたび精緻なテクニックと吟味されたマテリアルへと回帰する傾向を見せている。そこに他者との微妙な差異や、オリジナルな世界観を表現しようとする作家が増えているのだ。

 一方で、小町は泰然と、パンクであり続ける。できるだけ簡単につくったように見せること。大量生産やサンプリングを肯定すること。デビュー以来変わることなく、価値の消費すら怖れないその潔いスタンスは、現代の表現活動における小町渉の立ち位置を明確に示している。

「もし10代の頃の自分が見たらどう思う?と自問するんです。かっこつけてんじゃねえの? チャチャっとやるのがおまえのスタイルじゃないの? オリジナリティだとか作風だとか、それは見る人が決めることだと。葛藤もありましたが最近それもヌケました」。

 そんなところから連想されるのが、グラスゴー出身の英国ターナー賞候補作家である、ジム・ランビーである。小町と近い世代の彼も、悪びれもせず、ミュージシャンであったバックグラウンドを明快な基調とし、ロックの曲名をタイトルに引用した作品をつくり続けている。ビニールテープやレコードジャケットなど、どこでも手に入る素材を組み合わせた作品は、彼自身の音楽体験に捧げる“ハンドメイドの儀式”であり、眼や耳に入るモノすべてが刺激的だった子供の時分にいつでも跳べる装置なのだ。そこには、世間並みの常識を身につけた大人に成長しても失わなれることのない感覚、あの“感触”(タッチ)を手の届く場所に置いておきたいと望む、彼の矜持のようなものが反映されている。

「かつてシーナ&ロケッツの鮎川誠さんが、ヒットした曲のコードもリフも全部ヤードバーズのパクリじゃないか、って指摘されてこう答えたそうです。『よくわからんとですけど、ガーンと来て、バーンと出したとですよ』ってね。模倣でもリスペクトでもいい。サンプリングで損なわれるものは何もない。そこにあるのは子供心の純粋な憧れだけです」と小町は言う。

「もっとフットワークの軽いアートがあってもいいと思うんです。誰でもできるよ、こんなものっていうのが、僕にとってはいちばんの褒め言葉。プラスチックでできたチープな子供の夢にすぎなかったパンクが魅力的だったように、永続するもの、エスタブリッシュされたものには興味がない。感覚や初期衝動を、自分というフィルターを通してすぐに表現することに惹かれます」。

 近年では、落書きされたピンナップやケイト・モスの肖像のコラージュ、魅惑的な光とシニカルなメッセージを放つネオンといった、よりポップなイメージを身にまとった小町渉の作品世界。ちょっと見にはカラフルなキャンディのようだが、そこには甘くて強い酒(スピリッツ)が溶かし込まれている。うっかり口にすれば、忘れかけた体内の“棘”を刺激することになるかもしれない。