2012年11月アーカイブ

 

 

 

「渋谷清道 並行世界」

 

会期:2012年11月28日(水)~2013年1月6日(日)

オープニングレセプション:12月1日(土)19:00-22:00

会場:TRAUMARIS|SPACE(NADiff apart 3F)

 

 

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 スイスの欧州合同原子核研究所(CERN)は7月4日、質量の起源と言われる、宇  

 宙の最も基本的な粒子の一つであり、物に重さを与える「ヒッグス粒子」とみられる

 新粒子を発見した、と発表した。宇宙を構成する要素のなかで、私たちの目に見える

 星などの物質はわずか4%、目には見えないが23%を占めるとされるのが「暗黒物

 質」、さらに多くの割合で存在するのが「ダークエネルギー」だという。誕生した時

 には、光の速度で動き回る、互いにほとんど関わりを持たない粒子しかなかったとい 

 われる宇宙に、なぜ現在のようにさまざまな物質があふれているのか? 世界中の研

 究者が40年以上の歳月をかけて探し求めてきた「神の粒子」とも呼ばれるヒッグス

 粒子と、そこから拓かれる新しい物理学がその謎を解く鍵となることが期待されると

 いう。(2012年7月5日 共同通信より。一部改編)

 

私たちの住むこの宇宙と並行して、同一の次元を持つ、もう1つの並行世界(パラレルワールド)が存在する、という仮説は、人類の歴史上、幾度となく検証されてきました。もしもこの並行世界が、何層もの次元で同時進行していたとしたら? 今ここで目にしている物質や行為は、もう1つの世界から眺めれば、空虚な「抜け殻」に過ぎないかもしれません。

渋谷清道は、これまでにも「オーパーツ」(考古学上、発見された場所や時代にそぐわない成立ちを持つと考えられる出土品)の謎、あるいは慣れ親しんだおとぎ話のプロットに潜む寓意や不条理をテーマに作品を制作してきました。  

そこには明らかな「解」を見いだそうとするヴィジョンがあるのではなく、むしろ私たちが生きる現実世界の物質や現象を、感情のともなわない虚ろな「通過点」としてとらえ、それを「日焼けのあとの皮がむけたあとの様な感じ」(渋谷)の、儚い「抜け殻」のかたちに表現しようと試みます。

さらにその「抜け殻」感は、彼の創作のアイコンである「スパイログラフ(花定規)」のミステリアスな線描の文様によって、雪の結晶や蜘蛛の巣のような自然現象を連想させる、神秘的な造形として立ち上がります。

「並行世界」の在りようを体現する合わせ鏡。
ありふれた生活品の抜け殻のようなオブジェ。
意味の異なる空間に曖昧な境界をつくるスクリーン。

今回の展示は、カフェを併設したアートスペースという空間を意識し、どこか別の世界にある「もう1つのTRAUMARIS」の存在を、朧げに予感させるものとなります。

和紙や顔料、胡粉、金箔といった伝統的な日本画の素材を巧みに使い分け、デリケートでフラジャイルな外観とはうらはらに、強靭さをも併せもつ渋谷清道の作品世界。ぜひともご高覧いただき、各所へご紹介下さいますようお願い申し上げます。

 

TRAUMARIS アートプロデューサー・ライター

住吉智恵

 

●会場

TRAUMARIS|SPACE

〒150-0013 渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F

TEL 03-6408-5522 月曜休

16:00-24:00(日曜14:00-22:00)

URL:http://www.traumaris.jp 

問合せinfo@traumaris.jp


 

● プロフィール
 

渋谷清道 Shibuya Kiyomichi

http://shibuya-kiyomichi.jp/

 

日本画を学び、和紙や顔料、胡粉といった伝統的な素材の特徴を生かした平面・立体作品を発表している。2006年の個展では「いばら姫」、2007年に東京オペラシティ・アートギャラリーでエルネスト・ネト、ジム・ランビーとともに参加した企画展「メルティング・ポイント」では「人魚姫」、2011年に霞が関の飯野ビル・エントランスに常設されたインスタレーション「12ヶ月の精霊たちが集うかがり火」ではマルシャークの「森は生きている」、今年アートフロントギャラリーで行われた個展ではイソップ寓話「金の斧、銀の斧」といった、誰もが慣れ親しんだ物語を下敷きに、その寓意性や不条理を紐解く作品世界を構成。スパイログラフ(歯車の回転により円の軌跡をなぞり、同心円の模様を描く遊具。花定規ともいう)を使った抽象的な文様を基本のモチーフに、レース編みのように繊細でありながら、確かな強度を備えた造形を作品化し続けている。
 

アートフロントギャラリーの個展「あなたは、どっち?」にともなうインタビュー(ART iT):

http://www.art-it.asia/u/artfront/gXpxedh8UcT7F5uOCnZj/

http://www.art-it.asia/u/artfront/MyaZxSflqRhTukGLEdQY/

同展に寄せられた神谷幸江氏のテキスト:

http://www.art-it.asia/u/artfront/Rn1xqo5tvlUPOQH3LGDc/

 

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    個展「あなたは、どっち?」展示風景(アートフロントギャラリー)

 

主な個展:

2012年「あなたは、どっち?」(アートフロントギャラリー、東京)、2006年「いばら姫」(Gallery Side 2、東京)、2003年「OOPARTS」(Gallery Side 2、東京)

主なグループ展:

2007年「メルティング・ポイント」(エルネスト・ネト、ジム・ランビーとの3人展。東京オペラシティアートギャラリー、東京)、2005年「ハネムーン・ウィズ・ロメオ」(グロフリンマーグ・ギャラリー、バーゼル)、2004年「六本木クロッシング」(森美術館、東京)、「オフィシーナ・アジア」(ボローニャ近代美術館、イタリア)、「ペーパー」(エミリーツィングゥ、ロンドン)、2002年「渋谷清道、藤田淳、ムラタ有子、佐藤姿子」(Gallery Side 2、東京)

コミッションワーク:

2011年「12ヶ月の精霊達が集うかがり火 The bonfire - the spirits of twelve months tending」(飯野ビルディング1階エントランスホールに常設展示。所蔵:飯野海運株式会社)

 

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