川内倫子展 「Light and Shadow」
5 月 16 日(水)~7 月 1 日(日)
オープニング&トーク
5 月 20 日(日)
ゲスト:朝吹真理子(小説家)
2011 年 4 月石巻、女川、気仙沼、陸前高田。 訪れたどの場所もただただ静かでした。静けさは怖さを内包してると初めてリアリティを持って気づかされました。 音がなく、ただかつて機能していた人の営みのかけらが地面に積み重なっていて、空がとても広く感じました。 その場所でしばし佇んでいると自分が風に飛ばされてしまいそうなほどに小さな存在だと思えてきましたが、しかし確かに肉体を持っていまここに 立っているという実感もありました。ただそこに存在する、ということを実感するには静けさが必要なのだと思いました。 そしてそれはある種の恐怖を伴います。 そしてその静かな場所で白と黒のつがいの鳩と出会いました。よく見ると足にバンドを巻いています。たぶんこの場所で誰かに飼われていたようです。 わたしが夢中で追いかけて撮影したため、一度空に飛びましたがぐるっと2匹で一緒に1周しては同じ場所に戻ってきました。 それを何度も繰り返していたので、自分たちの家か飼い主を探しているのだと途中で気がつきました。 この鳩たちを見ていると、いろんなものの象徴であるように見えました。 わたしたちの住む世界の二元性。 白と黒、善と悪、光と影、男と女、始まりと終わり。 始まりと終わりのあいだには、喜びと悲しみ? 反転し繰り返すことが営みとはいえ、世の理にやりきれなさを感じながら撮影を続けました。 しかしまた、破滅のあとには創造していくしかない、と思えば、この景色もすべての始まりのように思えました。
写真家 川内倫子
この5月より東京都写真美術館にて、
これまでの活動の集大成ともいえる個展を開催する写真家・川内倫子が、
震災直後の被災地でとらえた風景のスライド・ショウを、
暗幕で覆った1人用のブースのなかで上映します。
がれきのなかで出逢った、飼い主と家を探しあぐねて彷徨う白と黒の鳩の、
無垢で清廉なイメージは、やがて写真家の意識の中で、
この世界を構成する二つの面=「光と影」へとつながります。
永劫に繰り返す生と死の営みにやりきれない無常感を感じながらも、
その体験は「1人きりでこの世の不条理と向き合う」ための
展示のアイデアへと結実しました。
本展はここを皮切りに、世界各国の会場へと巡回の旅に出ることとなります。
なお、本シリーズのオリジナルプリント 10 点も展示・ 販売し、
経費を引いた売上は被災地の復興支援のために寄付いたします。
川内倫子展 「Light and Shadow」
会期: 5月16 日(水)~7月1日(日)
オープニングレセプション&トーク
5 月 20 日(日) 18:00-21:00
トークセッション 18:00-19:00
ゲスト: 朝吹真理子 (小説家)
司会進行: 住吉智恵 (TRAUMARIS主宰/アートプロデューサー)
入場料:1000円(1 drink)
開館時間: 火~土 16:00~24:00 日曜 14:00~22:00
会場:TRAUMARIS|SPACE
渋谷区恵比寿 1-18-4 NADiff APART 3F 03-6408-5522
月曜定休
問合せ:info@traumaris.jp
URL: http://www.traumaris.jp
川内倫子
Rinko Kawauchi
1972年滋賀県に生まれる。2002年『うたたね』『花火』(
の二冊で第27回木村伊兵衛写真賞を受賞。著作は他に『
Cui"ヴァンジ彫刻庭園美術館(08年・静岡)ほか多数。